財布を選ぶなら知っておきたい革の種類ガイド!

革の種類を知ることは理想の財布選びの第一歩。
原皮が変わると特徴もこんなに違います。

上野店 杉浦

作成:2022年05月11日

更新:2022年05月11日

「革っていろんな種類があるみたいだけど、結局のところ何が違うの?」

靴やカバン、財布を選ぶときに、どんな革を使っているのか気になったことはありませんか?
一言で「革」といいますが、実はその原材料や加工、鞣し方などの違いで、とてもたくさんの種類があるんです!

今回の読み物は「どのような生き物の革か」という切り口で、その特徴・違いをご紹介したいと思います。
これを読めば、理想のお財布選びのヒントになるかもしれません!ぜひ最後までお付き合いください!

1. 革の成り立ち

動物の表皮を活かした天然素材である「革」

皆さんもご存じのように革は動物の皮を利用した素材です。実はほとんどの脊椎動物の皮を利用することができますが、実際に革素材として世界中で使用されているのは「家畜の皮」で、食肉の副産物として出てきます。
その原材料となる皮には「コラーゲン繊維」が組織があり、複雑に絡み合ってできています。それに化学処理をすることにより、耐久性などの性質を持たせて革素材になります。

鞣し(なめし)を経て、「皮」は「革」になる

先程から「かわ」という言葉に「皮」と「革」という2つの字を当てていますが「誤植かな?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実はこの2つの漢字には明確な意味の違いがあります。

様々な生き物から得られた原料である「皮」。これはほおっておくと腐敗して製品にすることができません。
その腐敗を防ぎ、耐久性を持たせる加工をするのですが、それが「鞣し(なめし)」と呼ばれる工程です。原料皮=「原皮」に薬剤を与えて化学変化を起こし、腐敗を防止して耐久性・耐熱性を持たせます。この鞣しを施されたものが「革」と呼ばれるものです。

鞣しの種類とそれがもたらす特徴の違い

革をつくるうえで重要な鞣し工程にはいくつか異なるやり方があり、出来上がった革はそれぞれ違った特長を持ちます。

①タンニン鞣し

多くの方が一度は耳にしたことがある「タンニン鞣し」は植物や人工的に作り出した「渋(しぶ)」を使って鞣す方法です。
タンニンで鞣された革は

・伸び・弾性が少ない
・鞣しに時間がかかる
・経年変化する

などの特徴を持ちます。一般的に革素材は経年変化するイメージがあるかと思いますが、実は経年変化をするのはこのタンニン鞣しで作られた革です。

②クロム鞣し

タンニン鞣しに並ぶ代表的な鞣し方が「クロム鞣し」です。塩基性硫酸クロムという化学物質を使い鞣す方法です。
クロム鞣しの革は

・柔軟性・耐熱性・弾力性に優れる
・短時間で鞣すことができる
・経年変化しない

といった特徴を持っています。

現在多く出回っている革がこのクロム鞣しです。幅広い革製品に用いられています。物によりますが、短時間で鞣すことができるためタンニンに比べ低コストで製造できるのが特徴です。気を付けるべき点は「経年変化しない」ということ。革のエイジングによる色の変化を楽しみたい場合は、タンニン鞣しのものを選んでください。

③コンビ鞣し

タンニンとクロムを併用する鞣し方で、両方の特性を生かすやり方です。片方の鞣しでは得られない特性や、欠点を補うことができます。

そのほか、アルデヒド鞣しや、日本独自の白なめしなど様々な鞣し方が存在します。
革は鞣し工程を経たのち、仕上げ加工を施されて、革素材として出荷されます。

少し前置きが長くなりました。次の項から様々な生き物の革の特徴についてご紹介していきます。

2. 「牛革」

バリエーション豊富、品質・コストに優れた革の代名詞

革の中で、もっともポピュラーなのが牛革です。食肉として消費される量が多いため流通量が多く、コストがほかの革に比べて安価で、良質な皮が多くあります。
また仕上げや加工の種類も豊富で、ほぼすべての革製品に使われています。

牛革は育てられた年数や性別の違いによって種類が分かれ、それぞれ特徴を持っています。

カーフ ー 最上級の質感を持つ子牛の革

生後6か月くらいまでの子牛の革です。
革の傷が少なく、触り心地も非常に柔らかい、心地よい質感を持っているのが特徴です。そうした点を活かして婦人向けの靴や衣料品、手袋、財布などの小物に使われます。また、牛革の中では特に高値で取引されるのがこのカーフです。
micでは「アニリンカーフ」というシリーズを展開しており、その上品な質感をお楽しみいただけます。

キップ ー 丈夫さときめ細かさのバランスが魅力

生後6か月~2年くらいまでの若い牛の革です。
カーフは上質ですが一方デリケートな革ですが、キップは強度の面でカーフより優れています。またキメ細かさも持ち合わせており、バランスが魅力的な革です。高級な靴、バッグなどで使用されています。
micでは「バグッダ」というシリーズでキップレザーの魅力を味わっていただけます。
欧米ではキップとカーフは区別されず、ひとくくりに「カーフ」と呼ばれます。

ステア ー もっとも需要が多く扱いやすい革

生後3~6か月に去勢し、2年以上飼育した雄の成牛の革です。
キップに近いキメの細やかさを持っています。また、面積が大きく厚みもあり、流通量が多いことから牛革の中でももっとも広く使われています。
財布はもちろん、カバン、靴、家具などにも使用されています。

カウ ー 生後2年の雌牛の革

生後約2年の雌の牛の革です。
キメの細かさと厚みは、キップとステアの中間くらいになります。ベリーと呼ばれる腹部が大きいのも特徴です。
大きな面で革を取れるため、カバンや衣料品、手袋などに使用されます。
micのシリーズでは肩掛けポーチのシリーズ「ボルセッタ」「ブレターニャヴァケッタ」でカウレザーを使用しています。

ブル ー 生後3年以上の雄牛の革

生後3年以上の去勢されていない雄牛の革です。
サイズは非常に大きく、キメはステアよりも粗いのですが、厚みがあり丈夫なのが特徴。去勢されていないため気性が荒く、けんかによる傷が多いという面もあります。
靴底など、強度が必要な箇所に使われることが多い革です。
micでは男性人気の高い「グレージングヌメ」「ペコスショルダー」でブルの革を使用しています。

3.「馬革」

柔軟な革質、そして「革のダイヤモンド」の異名を持つコードバン

牛革に比べて繊維が粗く、厚みも薄いため強度は若干劣りますが、柔軟性に富んだ革である「馬革」。
傷が多いのが難点ですが、サイズが大きく、その特徴を生かして衣料品などで多く使われています。

そして、馬の臀部から削り出して取る「革のダイヤモンド」の異名を持つ「コードバン」は、紳士向けの革製品やランドセルで知られた素材です。

コードバン ー 緻密な繊維層がもたらす唯一無二の質感

馬の臀部の皮下組織にある1mmに満たない繊維層がコードバンです。 ランドセルや紳士向けの靴、革小物で多く使われています。 非常に繊維が密に詰まっており、磨き上げることで牛革では出せないつるりとした質感になります。臀部のみのため、1頭から取れる量はほんのわずかで価格も牛革の数倍~数十倍になります。 Hawk Feathersの「コードバンシリーズ」では透明感と深い色合いが美しいアニリン染めコードバンを使用しています。

4.「羊革」

軽くふわりとした柔らかい質感が魅力

軽さが魅力の「羊革」ですが、牛革に比べ繊維が若干粗く、強度は少し落ちます。さらに種別により少し特徴が異なります。
縮れて巻いている毛質の「ウールシープ」は柔軟性があり、衣料品やムートン素材として使用されます。一方、直毛の「ヘアーシープ」はある程度の強度を持っています。その性質を生かして、ゴルフ用の手袋や衣料品に使われており、micの「ソフトメッシュシリーズ」はヘアーシープの革で仕立てています。

ラム ー滑らかな肌触りの子羊革

生後1年以内の子羊は「ラム」と呼ばれ、滑らかで上質な肌触りを持っています(1年以上の羊の革は「シープ」)。
その特長から、高級な手袋などに使用されます。micではフランスのラム専門タンナーが手掛けた素材で仕立てた、「ラムキルティングシリーズ」でその質感をお楽しみいただけます。

5.「山羊革」

ユニークなシボ目と柔らかさを持つ革

独特なシボ目を持つ山羊の革は、薄めですが羊革などに比べて繊維が充実しており、強度があります。少し硬い質感ですが、型崩れが起こりにくいといった特徴があります。大人の山羊は「ゴート」、子山羊の革は「キッド」という呼び名で区別されています。また、革製品としては靴や衣料品、手袋などに利用されています。micの「「ゴートメッシュシリーズ」は硬めに仕上げたゴートスキンを編み込んだ素材を用いています。

6.「豚革」

摩耗に強い、国内自給ができる革素材

革素材の中で唯一、日本国内で自給できる素材で、一部は海外に輸出もされています。
価格は牛革よりも安く、薄く漉くことができます。また摩耗に強いという特徴を持っており、財布では内側の素材として使用したり、軽さを活かしてバッグやカジュアルシューズなどにも使われています。
micでは「マイルドキップシリーズ」の内側や「グレージングヌメシリーズ」などの小銭入れ部分に使用。
またHawk Feathersの「カンガルーシリーズ」では、アメ豚と呼ばれる、植物タンニン鞣しをした豚革をグレージング(ガラス玉で磨く)加工を施して、茶褐色にしたもの非常に薄く漉いたものを使っています。

7.「鹿革」

日本では古来から使われてきた革素材

柔軟性に富み柔らかく、そして水に強いという特徴をもつ「ディアスキン」。日本では昔から武具などに使われており、馴染みの深い革素材の一つです。現在も衣料品や手袋などに使われています。また植物油でなめした「セーム革」は水を吸収しても硬くならないという性質を持ち、レンズや自動車を磨く際に利用されています。
Hawk Feathersを扱う日比谷OKUROJI店限定で、鹿革を使ったシリーズを展開しています。

8.「カンガルー革」

薄いながらも高い強度を持つ革素材

「カンガルー革」は薄く軽い素材ですが、その割にしなやかで高い引き裂き強度を持っています。その特徴から主に靴、とりわけサッカースパイクなどのスポーツシューズに利用されています。ただ、小さい革の割に傷が多く取り扱いが難しいという側面もあります。
Hawk Feathersでは、薄さを求める紳士向け財布に合う素材として「カンガルーシリーズ」を展開しています。

9.「その他の革」

爬虫類や鳥類などの特徴的な見た目を持つ革たち

いわゆるエキゾチックレザーと呼ばれる動物の革です。哺乳類では見られない特徴的な見た目をしています。
様々なエキゾチックレザーがありますが、ここでは代表的なもののみ取り上げます。

ワニ ー美しいウロコ模様が特長

「符(ふ)」と呼ばれるうろこ模様が特徴のワニ革。硬そうな見た目をしていますが、意外と柔軟性もあり、バッグやベルト、財布や靴などに使われています。革の単価は牛革などに比べて非常に高価です。アジア・アフリカ産のものは「クロコダイル」、アメリカ産のものは「アリゲーター」と区別され、符の形も異なります。

オーストリッチ ー丈夫で柔軟な高級素材

アフリカダチョウの革「オーストリッチ」は丈夫で柔軟性に富み、使い込むと艶感もアップします。そうした性質を活かして高級なバッグや靴に使われています。羽を抜いた痕の「クイルマーク」と呼ばれる丸い突起模様が見た目の特徴です。

ヘビ ー 美しい斑紋が目を惹く

ヘビの革は全身に美しい斑紋を持っているのが特徴です。
サイズにより呼び方が異なり、小型のものは「スネーク」、大型のものは「パイソン」と区別されます。主に革製品に使われるのは「パイソン」の方。バッグ、財布をはじめジャケット、靴などに使用されています。

素材の違いによって質感や見た目が全く異なる革素材。今回ご紹介した以外にもまだまだたくさんの革があります。
micで取り扱っている革素材の一覧は下記のリンクよりご覧いただけます。
新しく革製品をご購入される際は、その素材の違いも比べながら選んでみてください!
最後までご覧いただきましてありがとうございました。